学校ルポ/宮崎日大中(宮崎市)

記事読み取りスピーチ 自分の言葉で理解深める

 新聞記事をもとに、生徒たちによる1分間スピーチに取り組んでいる宮崎市の宮崎日本大学中(矢野三千宏校長、296人)の藤井理恵教諭。本年度から朝の会で週3回取り入れているが、生徒たちの「文章を読み取る力」に驚いている。生徒たちは記事の感想だけでなく、自分で調べた内容も発表に盛り込む。午前8時20分。きょうもまた、一人の生徒が発表を始めた。

 藤井教諭が1分間スピーチを取り入れたのは、生徒たちに人前で話す機会を増やしたかったため。授業内の発言だけでは話す機会が足りないと考え、受験面接に向け生徒が自分の言葉で話す訓練の場にしたいと企画した。

 話す内容を深くして自分の考えも入れて発表してほしいとの思いから、題材は新聞から取ることに。すべての教科に関連する内容がある新聞は、題材を見つけるのに最適だった。

 発表は週3回、毎回一人ずつ。この日、発表を担当した町田紗都(さと)さん(14)は防災対策を取り上げた。「能登半島地震のニュースを見て対策の重要性に気づいた」として、クラスメートに被災時に役立つ知識を紹介した。

 町田さんは「新聞紙を体に巻くと温まる」「アルミ箔は食器やフライパンの代わりになる」など実例を挙げ「私たちが住む宮崎県でも、いつ何が起こるか分からない。皆さんもぜひ調べてみてください」と呼びかけた。

 藤井教諭は発表を受けて「普段身近にあるものでしのいで助かっている人もいる。災害時、家族がばらばらの時に『どこに集まるか』と話をしている人もいるだろう。いろいろなときに危機管理ができるといい」とまとめていた。

 町田さんは発表を終えて「いろいろな記事があったので、身近なニュースを選ぶのに時間がかかった。新聞は文字が残るので読み返せて理解しやすい」と振り返った。

 藤井教諭は1分間スピーチについて「取り上げる内容が重ならないよう生徒たちに頼んでいる。経済の話題など、スピーチを通して生徒同士が新しく知ることもあった」と話す。

 週末や連休には、生徒一人に1本ずつ、宮崎日日新聞に掲載された評論をタブレットに配り、感想を書かせる取り組みも行った。集まった感想は冊子にまとめ、内容を生徒たちで共有できるようにした。

 新聞の活用を通して藤井教諭は「生徒たちは私たちが思う以上に『読み取る力』がある。新聞を読んで生徒たちは『教科書で学ぶ内容とつながっている部分がある』と感じているのではないか」と期待していた。

【写真】新聞記事に自分で調べた内容も加え発表している宮崎日大中の1分間スピーチ

「つながり」を知って

 1分間スピーチをするようになって、生徒たちが新聞に目を通す機会が増えた。新聞を通じ、いろいろな立場の人の気持ちを考えられるようになってほしい。生徒たちは社会の仕組みについて、まだ知らないことも多いはず。「よく分からない」で済ませるのはもったいない。中学生の今しか感じられないことを大切にしてほしい。新聞を読んで、みんな一人で生きているのではなく世の中はつながっていることを意識して、社会に出たときに貢献できる人になることを期待している。

【写真】藤井理恵教諭