学校ルポ/都城工業高(都城市)

情報の伝達・加工体験 互いの記事読み意見交換

 都城市・都城工業高(香川健二校長、697人)は本年度までの2年間、日本新聞協会によるNIE実践指定校として新聞記事を活用した授業などに取り組んできた。生徒たちは自分の意見を述べられるようになることを目指し、さまざまなニュースに触れ、授業では記事作成も体験することで情報伝達の流れや注意点を学んだ。

 今月中旬、化学工業科の1年生34人に波賀康成教諭(53)が「世論と私たち」をテーマとした公共の授業を行った。1月に都城工業高バレー部が春高バレーに出場したことを素材とし、クラスメートのバレー部員から試合の様子などを聞いて記事を作成するという内容で、情報の伝達と加工を体験することが狙いだ。

 初めにバレー部員7人が代わる代わる黒板の前に立ち、開催日と会場、試合展開や応援の様子などを具体的に説明。活躍した選手、来年への展望といった周辺情報も伝え、他の生徒たちはメモを取っていった。

 「では、そのメモを元にして記事を書いてみましょう」。波賀教諭が400字詰め原稿用紙1枚を配り、生徒たちは10分ほどの時間が与えられ、記事作成にチャレンジした。以前の授業で5W1Hなど記事の基本構成については学んでいたが、いざ原稿用紙を前にすると思うように書き進められない生徒も。波賀教諭は書き終えたら見出しも考えるよう指示した。

 ひと通り書き終えると、生徒たちは5、6人ずつでグループを組み、互いに記事を回し読み。手元のワークシートに「読みやすさ」「伝わりやすさ」などを5段階評価で記入し、自分の記事に対しても「工夫した点」「物足りないと思った点」を書いていった。生徒たちは時折、声を出して記事を読み上げながら他の生徒が書いた記事を自分のものと比較。それによって書き方の違いや情報不足に気付いていた。

 最後は波賀教諭が本紙1月6日付の春高バレー記事を紹介しながら、あらためて各生徒に自分で書いた記事を振り返らせ、まず試合結果を伝えているか、初戦敗退だったが惨敗ではなかったことまで書けていたか確認するよう促した。その上で「スマホなどを使って情報発信ができる中、相手に伝わる文章をどのように書くか今回の経験から考えてほしい」と呼びかけて授業を終えた。

波賀康成教諭

意見述べる力を育む

 本校では時事問題発表シートを中心としてNIEに取り組んできた。1年生の公共の授業で毎時間5分ほどかけ、生徒4人が関心を持った記事の感想や意見を述べる。当初は記事の引き写しが多かったが、だんだんと自分の考えを言えるようになった。生徒たちは教師の予想以上に新聞に慣れ親しんでおらず、まず紙面に慣れさせるところからNIEを始める必要があったと思う。生徒たちに新聞がある暮らしを送ってほしいので、今後も時事問題発表シートを続けたい。