「記者の心」探り活用を  県NIEセミナー

教育現場での新聞活用について考える「県NIEセミナー」(県NIE推進協議会主催、県教委後援)は11月11日、宮崎市の宮日会館で開きました。本県NIE実践指定校の教諭や大学、マスコミ関係者など約30人が参加。日本新聞協会のNIEコーディネーターを務める枝元一三さんが「新学習指導要領とNIE」のテーマで基調講演したほか、7月に青森市で開かれたNIE全国大会青森大会の報告もあり、新聞活用学習への理解を深めました。

 事前に資料選び大切 全国大会報告

セミナー冒頭、同協議会の浜野崇好会長が「このセミナーを期に、さらにNIE活動を活発にしていきたい」とあいさつ。基調講演に続き、NIE全国大会に参加した4人の教諭が公開授業や実践発表について報告しました。

東日本大震災で被災した東北での大会となった第16回NIE全国大会(日本新聞協会主催)。報告では、まず日向市立大王谷小の栗栖健治主幹教諭が、東日本大震災をテーマに、新聞記者が何を、どのように伝えたのかを学んだ小学校の公開授業に触れ、「子どもたちの学習が社会とつながっていくのが分かった」と話しました。

同市立大王谷中の島崎博英教諭は、数人のグループで震災に関連する記事を集めた新聞作りに取り組み、「難しかった。生徒に指導するときは、自分が難しいと思った点を意識しながら教えていきたい」と振り返りました。

延岡市立土々呂中の片山弘喜教諭は、「行政や学者、現場の教員が協力してNIEに取り組んでいる他県の実態を踏まえ、宮崎でも協力し合いながら広げる必要性を痛感した」と報告。

県立宮崎大宮高の藤村晃久講師は、メディアリテラシー(情報を読み解き活用する力)を向上させることに主眼を置き、さまざまな資料を通じて生徒の考えを深めることを試みた高校の公開授業について報告しました。

一方、小中学校、高校ともに共通する課題として、各教諭は授業で提示する記事や資料の量について、「情報が多過ぎると、子どもたちが資料を読み込めないままに授業が進んでしまう。あらかじめ、教師による精選が必要だ」と分析しました。

 実践教科広げよう 各学校の取り組み紹介

意見交換では、NIE実践校の教諭らが各学校の取り組みなどについて紹介しました。

小林市立栗須小の外村正人校長はNIE実践について、「小中一貫教育をうまく使い、小学校から発信し、中学校の他教科へも新聞活用を広げたい」と提起しました。

NIE実践校2年目となるえびの市立加久藤小の的場輝行教諭は、5年生の理科の授業で新聞に掲載されている雲画像や衛星画像を活用していると報告。今後は、スピーチの話題作りなど子どもたちが新聞に興味を持つように教諭側からアプローチする工夫が必要だと話しました。

同じく実践2年目の西都市立三納中の岩倉徳生教諭は「実践を通して、生徒が文章を書くことへの抵抗がなくなってきたと感じる。たくさんの子どもが新聞を手に取るような環境作りが大切」と強調。高鍋町立高鍋西中の下田睦夫教諭は、新聞記事を読んで感想を書く取り組みを通し、「継続することで新聞に興味を持ち、休み時間に新聞を読む習慣が身に付いている」と成果を語りました。

 枝元一三氏の講演要旨

学習指導要領が改訂され、授業に「新聞の活用」が盛り込まれた。本年度から小学校で完全実施され、来年度からは中学、高校でも順次導入。NIE活動の充実が期待される。

指導要領改定のポイントで第一に挙げられるのは、言語活動の充実だ。言語は、理論や思考だけでなく、感性や情緒の基盤もなすもの。基本は国語科だが、全ての教科で取り組むことになっている。理科や社会では観察、実験、レポートで記録・報告する。音楽や図工、美術などでも言葉や身体を使った表現の充実が図られている。

学習意欲の向上、学習習慣の確立も重要。早いうちに身に付けておかないと、学力はなかなか上がらない。また選択教科廃止や総合的な学習の時間を減らすことで、教科の授業時間を増やしている。

今回の改訂の特徴は、学力重視で「ゆとり教育」から脱却し、学習内容が大幅に増えた点。経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査(PISA)で、日本の小中学生の学力低下が懸念されていることも影響しているだろう。

新学習指導要領では、教科書の中で、学級新聞作りや情報の比較読みをはじめ、新聞に関係する指導事項がかなり多い。「ゆとり教育」で教科書は薄くなっていったが、新指導要領では学力重視の結果、小学校算数で?%、理科が?%増えた。授業時間も全体で5%増加したが、差し引きすれば授業時間は足りないままだ。今後は一段と教師による精選が重要となる。

新聞が教科書に掲載されたが、指導要領はおよそ?年に1度改定される。中央教育審議会では、見直し作業が始まりつつある。今後の指導要領で新聞が取り上げられ続けていくかどうかは不透明だ。

NIE実践の場として、(1)教科との連携(2)総合・道徳・特活の活用(3)ファミリーフォーカス(家庭における新聞活用)が挙げられる。NIEで閲読習慣が付くことで、新聞をよく読む子どもは学力が高いと言えると思う。

家庭で新聞を読む「ファミリーフォーカス」を推進するのも手だ。家庭で新聞を読み、親子や祖父母と話をすることで、人間関係が育成される。

現代はデジタル情報化時代。ニューメディアは、情報受発信の自由度と高さを持つ一方、自己責任や自主規制の欠落が指摘され、「ネットは怖い」とも言われる。新聞には、紙だからこそ持てるジャーナリズム性がある。NIEで育てたい情報の選択、処理、発信能力を育むのに、新聞は大きな役割を果たしている。新聞は編集機能が徹底しているので、安心して学習に使える。だからこそ指導要領に入ってきたのではないか。

新聞は、民主主義を支える市民を育成するための大切なメディア。ジャーナリズムは廃れない。新聞がなくなったら、その社会はだめになる。NIEを推進していく上で今後の課題は、いかに広げるか、いかに深めるか、いかにサポートするかだ。そのためには教諭が先行実践例を学ぶことや、新聞社の支援が鍵となる。

新聞で読み解く力を 青森でNIE全国大会

NIE全国大会

「読み解く力 新聞で」をテーマに開かれたNIE全国大会

新聞を教育現場で活用するNIE(教育に新聞を)活動の第16回NIE全国大会(日本新聞協会主催、東奥日報社など主管)が7月25、26日に青森市で開かれました。東日本大震災で被災した東北での大会となりましたが、地元青森をはじめ岩手、宮城、福島などの被災県、全国の小中高教員や新聞関係者ら850人が参加。「読み解く力 新聞で―学校・家庭・地域からNIE」をテーマに話しあいました。本県からもNIE実践指定校の教諭ら5人が参加し、公開授業や実践発表を通して、NIEに理解を深めました。

河田卓司日本新聞協会博物館・NIE委員会委員長らのあいさつに続き、北川達夫日本教育大学院大学客員教授が「『ことばの力』を身に付ける」と題して記念講演。震災という未曽有の国難の時だからこそ、新聞を活用して大きな物語を語ってほしいと述べました。

続いて行われたパネルディスカッションでは、まず青森県NIE推進協議会会長の児玉忠弘前大学教授が基調提案しました。

今年から小学校で実施の新学習指導要領で、新聞を教材として扱うことが明示されました。その節目の年。児玉教授は「新聞を使った教育の大衆化が始まったと言える。新聞をどう教材化し、授業で扱うのか。待ったなしの時だ」と述べました。

それを受けて、阿部昇秋田大学教授は「新聞は民主主義を構成する柱の一つだ。質の高い読者が質の高い新聞を作ると思う。教材開発も随分進んでいる」と発言。

これに対し、文部科学省国立教育政策研究所の杉本直美学力調査官は、全国学力・学習状況調査で「全国新聞」という架空新聞を作り中学の国語問題を出したことを紹介。

朝刊、夕刊の区別が分からなかったり、1面や社会面などの面意識がない子どもがいる現実を説明。そんな中で「新聞の有用性を意識させる必要があると思う」と語りました。

また青森市千刈小学校の大賀重樹教諭は、子どもたちが自分で作った新聞を説明することでプレゼンテーション能力が高まることや、新聞が親子のきずなを深めるファミリーフォーカスなど、さまざまな取り組みを紹介しました。

さらに東奥日報社の南谷毅生活文化部長が「学校の授業には必ず正解があるが、社会には正解がないので、自分の頭で答えを探さなくてはならない。その意味で新聞は生きた教材だ」と語りました。

また「今後、教育界と新聞界がどう手を結ぶのか」(児玉教授)、「新聞社側が積極的に教育現場に入っていくことが必要」(南谷部長)など、新学習指導要領の新聞活用を受け、教育界、新聞界のコラボレーションについての論議も目立ちました。

2日目は公開授業や実践発表、教諭向けのワークショップがありました。このうち堤小では、新聞記者へのインタビュー資料をもとに、東日本大震災の取材や報道が、誰のため、何のためであったのかを考える公開授業が行われました。地元新聞社が震災当日に発行した手書きの新聞や避難所での子ども新聞を見て考え、話し合う授業に、全国からの参加教諭が真剣に見入っていました。

来年のNIE全国大会は福井市で開催されます。

本県からの出席者(順不同、敬称略)
片山弘喜(延岡市立土々呂中)栗栖健治(日向市立大王谷小)島崎博英(同大王谷中)崎山悦子(宮崎市立赤江東中)藤村晃久(県立宮崎大宮高)

「NIEみやざき」6月発足 県推進協総会で報告

宮崎県NIE推進協議会総会

宮崎県NIE推進協議会総会

学校教育に新聞を生かす運動を展開している県NIE推進協議会(浜野崇好会長)の本年度総会は26日、宮崎市の宮日会館で開かれました。県内の新聞・通信社、教育関係者ら18人が出席し、NIE全国大会(7月25、26日・青森市)への教師派遣など本年度予算と事業計画を協議。教職員のNIE研究会「NIEみやざき」発足の報告がありました。

「NIEみやざき」は、大王谷小中学校の猪野滋校長(NIEアドバイザー)が発起人代表となり6月1日に発足します。毎月1回程度開く研究会で情報交換や研究を行うほか、教職員のネットワークをつくり、さらなるNIE実践の活発化を図ります。NIE活動を中心とした教職員研究会は県内初。

また、本年度のNIE実践指定校に、前年度から継続の加久藤小(えびの市)、三納中(西都市)、土々呂中(延岡市)、宮崎第一中(宮崎市)、県立高城高(都城市・同協議会認定)、新規の赤江東中(宮崎市)、大王谷小(日向市)、大王谷中(同)、奨励枠の県立宮崎大宮高(宮崎市)の9校を決めました。

実践指定校には、日本新聞協会と同協議会が新聞6紙の購読料を最長4カ月助成。各校の実践教諭に授業で新聞を活用してもらいます。