「聞きトレ」記事親しむ 意見交換 多様な視点理解
読むだけでなく聞くことでも新聞記事に触れ、感想や意見を書いたり述べ合ったりしてコミュニケーション能力を高める-。本年度のNIE独自認定校となっている延岡市・恒富中(佐藤省吾校長、228人)は、生徒たちが記事に接する方法を工夫。さまざまな気付きと学びを得ることで生徒たちは考え方やものの見方を広げている。
毎週水曜の放課後、同校では「聞きトレ」という取り組みを実施。生徒会メンバーが選んだ記事を校内放送で読み上げ、全学年の生徒が耳から記事に触れる。昨年度までは教師が輪番でスピーチを行っていたが、本年度はNIE担当の山本延久教諭らが計画を練り、記事に親しむ機会として活用している。
実施時は複数の設問を記した用紙が配られ、例えばガザ空爆の記事では「イスラエル軍は24時間で約何カ所を空爆したと明らかにしましたか」というように記事の内容を問う。用紙は回収して採点されクラス別に平均点を出し、上位3クラスが発表される。
国語が苦手だという3年生の上田夢人さん(14)は「文章を読むのとは別の感覚があり難しい。大事な箇所をメモできるようになりたい」と話す。
毎月最終水曜は「聞きトレ」を休み、代わって午前8時から「熱中TIME」を行う。こちらも記事は生徒会が選ぶが、記事コピーに一つの設問を付けた用紙を全クラスに配布。初めに10分間で記事を読んで設問に回答し、続く5分間で回答理由などを周りのクラスメートと互いに述べ合う。
11月の「熱中TIME」では、方言をテーマにした本紙11月21日付の九州4紙合同アンケートの記事が使われた。設問は「後世に残したい宮崎弁トップ3とは?」で、記事コピーのランキングはトップ3が黒塗りに。最後の5分間で生徒たちは「1位は『てげてげ』じゃないやろか?」などと話しながら方言の魅力や大切さなどについて意見交換した。
放課後には朝の意見交換で気付いたことや感想を10分間で用紙に記入。3年生の岡田洸晟さん(15)が「他の人と話し合うと新しい視点が増える」と振り返るように、クラスメートの意見や考えを知ることには発見や驚きがある。生徒たちは自分の意見や考えとの違いを探り、それらを理解しようと努めることでコミュニケーション能力に磨きをかけている。
写真=「熱中TIME」に取り組む恒富中の生徒たち
自分の考えを客観視
本校のNIEは、生徒が主体となって取り組める内容を目指してきた。日ごろ生徒たちは長い文章を読む機会がないが、そのような時間を設けると集中して読むようになる。記事を読むだけなら自宅でも良いが、意見交換は学校でしかできないし、意見を交わすことは自分の考えを客観視することにつながり、他の人の考えを学ぶことも可能だ。今後は「熱中TIME」で生徒が書いた優れた意見や感想を他の生徒に伝え、フィードバックできるようにしていきたい。
写真=山本延久教諭