学校ルポ/上野中(高千穂町)

 各紙読み比べ 違い探る 多様な意見を知る「窓」に

 新聞は多様な意見を知る「窓」になっていた。高千穂町・上野中(末原幹大校長、22人)3年の国語の時間は、同じ日のニュースを四つの新聞で読み比べ、各紙の違いを探った。同じ出来事でも各紙で扱いが違う理由を一人一人考え、意見を述べる生徒たち。クラスメートは何を、どう考えているか。お互いの発表を通して生徒たちは、考え方は一つではないと感じ取ったようだった。

 池田恭平教諭(37)が生徒たちに2枚のプリントを配った。1枚は当日の新聞4紙が1面で扱った、パレスチナ自治区ガザの記事。もう1枚は今回の授業のためのワークシート。「さまざまな新聞を読み比べると、どのような違いが見られるだろうか」と授業の目的が書かれていた。

 各紙の記事の第1段落(リード)を生徒に読ませる池田教諭。「新聞記事は義務教育で習う漢字で読めるように書かれている。新聞に出る漢字は読めるようになってほしい」と指摘した。

 次の課題は各紙のリードで主に書かれていることをワークシートに抜き出すこと。生徒たちはワークシートをもとに「ガザ地区が南北に分断された」「停戦のめどが立っていない」などと口々に答えた。

 池田教諭はそれを受けて「何か気付きませんか」と追加質問。生徒たちは「中心に書かれていることと大きな見出しが同じ」と述べた。「大事な情報は見出しに使われる。見出しは必要な情報を読む人に与えなくてはいけない」と池田教諭は記事と見出しの関係について説明した。

 最後の課題は各紙の比較。ヒントとして池田教諭が示したのは「各紙で見出しはなぜ違うのか」という点。生徒たちは再びワークシートに書き込み、考えをまとめていく。出てきた意見は「見出しが同じだと他の観点から記事が読めない」「新聞の良さを出して買ってもらうため」「会社によって伝えたい内容が違う」など一人一人異なっていた。

 池田教諭は「意見がみんな違っているのはすごい。正解はないので、みんなの意見が当たっている部分がある」とまとめ「新聞は別々の会社がつくっているから視点も別々になる。こんな違いがあるのは良いこと。『この記事は他の新聞ではどう扱われているか』と考えて読むと面白い」と新聞の新たな読み方を投げかけて、授業を締めくくった。

池田恭平教諭

ゲーム形式で親しむ

 最後の発表で生徒たちはお互いの違いを感じ、みんなの意見を元に考えを深められたと思う。9、10月は各紙から共通の記事を探し、2紙で見つかれば2ポイント、3紙なら3ポイントとゲーム形式で新聞に親しんだ。10月後半からは給食時に、印象に残った記事の紹介と自分の意見を1人1分、放送で述べている。著名人から中学生へ送られるメッセージ企画「14歳の君へ」に感想を投稿することでも、生徒たちのやる気を引き出している。NIEを通して、生徒たちが新聞を意識して見る時間が増えてきたと感じている。