学校ルポ/鵬翔中(宮崎市)

小論文作成に新聞活用 「提案型思考」育成目指す

 県NIE推進協議会から本年度のNIE独自認定校に選定されている宮崎市・鵬翔中(土肥隆夫校長、208人)は、小論文の授業で新聞を活用。入試で小論文を出題する大学が増える中、同校は中高一貫校の強みを生かし、中学生のうちから生徒たちの読む力、書く力を鍛え、小論文作成に求められる「提案型思考」の育成を目指している。

 2年生の小論文の授業が始まると、原稿用紙とともに新聞記事のコピーが配られた。今回の小論文のテーマは「ミヤザキ未来創造プラン」。授業を受け持つ吉田成哉教頭(61)が用意した記事は本紙の社説や「くろしお」などで、本県の人口減少やインドの人口増を取り上げたものだった。

 吉田教頭は「人口減少で宮崎県にどのような影響が出るか」「人口減少が進む宮崎県を支えるため、どのような取り組みが必要か」という論点で小論文を書くよう指示。配布した記事を読み上げながら難解な用語や記事の内容などに解説を加え、これから社会がどのように変わっていくかが書かれているため「新聞は未来を創造する力になる」と説いた。

 同校では、小論文の授業を全学年で週1回、2時限に分けて実施。テーマに関する記事を初めの10分ほどで黙読し、その後は吉田教頭による記事の解説に耳を傾け、小論文を作成する。

 文章量は原稿用紙2枚程度の約800字で、授業時間内に書き上げられない場合は宿題として持ち帰る。

 「はい、ここに赤線を引いて」。吉田教頭は記事の要点となる部分を指摘しながら、記事中の「合計特殊出生率」「転入超過」といった言葉について具体的に説明していく。生徒たちが小論文のテーマに対する考えを深められるよう、時には宮崎大医学部の地域枠など関連事項にも触れ、「地域を守るためにどうしたら良いかが今回の小論文のテーマ」「自分が県知事になったつもりで書きなさい」と呼びかけた。

 小論文作成では、テーマに対して自分の意見やアイデアを生み出す「提案型思考」が必要となる。そこで役立つのが幅広いテーマを網羅する新聞記事だ。

 意見やアイデアの元となる知識のインプットを推し進め、実際に小論文を書くアウトプットの訓練と組み合わせることで、生徒たちの「提案型思考」は着実に育っていく。

【写真】吉田教頭から新聞記事についての解説を聞く鵬翔中の生徒たち

吉田成哉教頭

記事要約、感想文も

 本校ではNIE活動として小論文の授業のほか、自分で選んだ記事の要約と感想を書くNIEレポートの作成も行っている。本校の生徒たちは話す力や聞く力は持っているが、読む力と書く力が弱い。大学入試は小論文が必須となってきているので、この二つの力を中高の6年間で時間をかけて育てようとしている。現在は小論文の授業を朝課外で行っているが、今後は正規のカリキュラムにして授業時間を増やし、さらに生徒たちの読む力、書く力を伸ばしたい。