実践指定校・都農中学校ルポ掲載(7月4日)

 日本新聞協会のNIE実践指定校である都農町・都農中の新聞活用事例を紹介する学校ルポが宮崎日日新聞の7月4日付に掲載されました。
 記事は以下の通りです。
 
2017年度に続き本年度も日本新聞協会のNIE実践指定校となった都農町・都農中(日〓俊一郎校長、239人)では、社会科教諭3人が中心となり、授業で新聞を活用。生徒たちが記事を目にすることで少しでも社会に関心を向けるよう、工夫を重ねている。(黒木友貴)

 [〓はハシゴ高=日高俊一郎]

 3年生の社会科の授業。初めに本田浩之教諭(50)が最近の新聞各紙を次々と掲げ、生徒たちに記事の見出しについて尋ねていく。見出しは一部の文字が付箋で隠され、生徒たちは見出しの他の部分や写真、本田教諭からのヒントなどを手掛かりに、隠された文字を推測する。
 「○○首脳会談」「○○人労働者拡大」「○○山噴火」など国内外の主要ニュースから出題され、生徒たちは「米朝首脳会談」「外国人労働者拡大」「硫黄山噴火」と元気よく解答。「○○○法案衆院委可決」で正解の「カジノ」ではなく「安保」「賭博」と誤答が飛び出すこともあったが、生徒たちは臆することなく口々に答え、さながらクイズ大会のような雰囲気の中で進んでいく。
 時間は5、6分ほどで、本田教諭は正解を示す際に「米はアメリカ、朝は北朝鮮を意味しているね」「外国人労働者拡大の背景には少子高齢化があります」などと簡単な解説も行う。新聞を教材として用い、生徒たちが楽しみながら時事問題に触れられるようにして、授業の進行に弾みをつけるのが狙いだ。
 教室が活気づいたところで、今回の授業テーマ「第2次世界大戦以降から戦後の出来事には、どのような流れがあるのか」についての学習へ。戦前、戦中の人物名や出来事を尋ねるクイズ8問が出された後、過去の新聞記事の縮小コピーが配られた。
 分量は1932(昭和7)年のチャプリン来日から78(同53)年の日中平和友好条約締結までA4判で33枚。二・二六事件、広島への原爆投下、朝鮮戦争、東海道新幹線スタート、アポロ11号による月面着陸など、時代の息遣いを伝える紙面に生徒たちは目を通し、同時に配られた設問シートに10分ほどかけて解答を記入していく。
 設問は「我が代表堂々と退場す」と日本の国際連盟脱退を報じる記事について「『我が代表』と書いてあるが、この人物は外務大臣の誰か」と問うなど、記事を読めば答えられるものが並ぶ。だが、生徒たちは現在とは異なる漢字や仮名遣い、見慣れない「大詔渙発(たいしょうかんぱつ)」「國體(こくたい)」といった単語に苦戦。「これ、何て読むの?」などと言いながら、教科書で調べたり本田教諭に尋ねたりして正解を探した。
 最後は答え合わせを行った後、黒板に張られた「満州事変」「キューバ危機」といった歴史的トピックが書かれたカード25枚を数人の生徒が年代順に並べていき、全員で戦前から戦後への流れを確認した。
 その時代の空気感やリアリティーを感じさせる当時の新聞は、もう一つの歴史の教科書とも言える。生徒たちは過去の記事に驚きを覚えるとともに、新聞が時代の記録者であることを学んでいた。

マイレッスン/各紙の1面張り紹介・本田浩之教諭

 NIE実践指定校になった昨年から新聞の活用を模索してきて、授業では生徒たちに米朝首脳会談など注目すべき記事を解説したり、付箋で隠した見出しの一部を尋ねてみたりしている。
 今年5月からは廊下に各紙の1面を張り、生徒たちの目に触れるようにした。その上で日頃から1年生は記事を読んだ感想のスピーチを行い、2年生には関心のある記事について、その理由を発表させるようにしている。また、3年生に対しては、教室の近くに昭和と平成の各時代の記事を読み比べできるコーナーを設け、毎週配布する学年通信では宮日新聞の記事を紹介するなどして、新聞への興味を持たせようとしている。
 生徒たちには世の中のことに広く関心を持ってほしいので、これからも新聞を読む生徒を育てていきたい。私自身すべての記事を読んで理解できているわけではなく、分かったつもりにならず勉強を続けるつもりだ。(談)

感想
 
記事の言葉調べ勉強/3年 稲山海音(かのん)さん(15)

 毎朝、学校で新聞各紙を読み比べている。記事の中に難しい言葉が出てくることもあり、それを分かろうとすることが勉強になると思う。
 
スポーツ以外も読む/3年 黒木克樹さん(15)

 野球やサッカーが好きで、たまに自宅でスポーツ記事を読む。これからは世の中の動きが分かるよう、他のジャンルの記事も読みたい。
 
小さな記事にも注目/3年 才名園遥那(さいなぞのはるな)さん(15)

 昔の新聞には今とは違う漢字もあり、読むのが難しかった。地元の出来事が気になるので、新聞を読むときは小さな記事にも注目したい。

NIEのすすめ/宮崎学園短期大学長 宗和太郎/世間知り考える力に

 若い世代が新聞を読まなくなった。本学では若者が新聞に触れる機会をつくろうと、入学予定の高校生達に新聞記事のスクラップブックを作らせている。テレビやスマートフォンからいくらでもニュースを得られる中、わざわざ新聞を読む必要はないと考える人も多いだろう。では、若い世代に新聞を読ませる意義はどこにあるのだろうか。

(1)意外なことに出会う

 新聞を眺めていると「へー」と思わせてくれることに出会える。ネットは意に沿う情報を集めるのには便利であるが、意外なことには出会いにくい。人間は一度あるものを「黒」と思うと、それを支える情報ばかりに眼を向け、それを否定する情報には眼を向けない傾向がある。思い込み、決めつけを防止するためには、知りたいと思っていないことにも出会える環境を作ることが大切である。それが新聞を広げて読む習慣である。
 誰でも情報を受発信できるネットでは、フェイクニュースが世論を作ることが起きている。新聞も嘘の情報を流すことがないわけではないが、そうならないために格段のコストをかけている。だから我々は購読料を払うのである。民放テレビの制作費は広告スポンサーが払う。広告の視聴率を上げるために、放送内容は大衆の見たい欲望を反映する。新聞が反映するのは読者の知的欲求であり、視聴率ほど即物的でない。新聞は、世界に自分の目を開いてくれるのである。

(2)文章を読み、考える力を作る

 一日の読書時間がゼロという大学生が半数以上で、増加傾向にあるという。「読む学生」と「読まない学生」の二極化がある。中学・高校での「自宅学習をする生徒」と「自宅学習をしない生徒」の二極化、学力の二極化、経済格差の二極化とつながるように思う。
 一冊の本を読むには集中力と、読書を続ける体力が必要である。そして一冊を理解するには、内容を整理したり、引っかかるところに思いを巡らせたりする思考力が必要である。大変だが、読了したときの達成感は大きい。本は自分の精神の血や肉になる大切な栄養だ。
 今後、子どもの65%は今は存在しない仕事に就くという大きな社会変動が待ち受ける。人生の様々な試練を乗り越えていくのに、ネットとテレビからの情報摂取だけで足りるはずがない。読書の入り口として新聞記事は適していると思う。世の中の様々なことがバランス良く、コンパクトな記事に収められている。世間を知る入り口であり、文章を読む基礎体力作りにもなる。自分で沈思黙考する時間への入り口でもある。
 高校生たちが入学前に作った新聞記事のスクラップブックの量は、大学2年後期の成績と相関があり、量が多いほど成績が高くなる傾向にある。知的体力作りのため、新聞記事のスクラップを多くの方にお勧めしたい。

 そうわ・たろう 1954(昭和29)年、名古屋市生まれ。上智大大学院修了後、宮崎学園短期大教員を務め、2015年度より現職。「宮崎のために学び、宮崎のために働く」がモットー。