実践指定校・木花中学校ルポ掲載(8月1日)

 日本新聞協会の実践指定校である宮崎市・木花中の新聞活用例を紹介する学校ルポが宮崎日日新聞の8月1日付にカラー特集で掲載されました。
 記事は以下の通りです。

 2017年度に続き本年度も日本新聞協会のNIE実践指定校となっている宮崎市・木花中(岡留君子校長、301人)は、授業での新たな新聞活用法を模索。一つのテーマに基づき記事を読ませることで、生徒たちの思考の幅を広げ、新たな発見を促そうとしている。

学校ルポ/視野、思考広がり期待

 「前の授業で話した電池のことを覚えているかな?」。2年1組で行われた社会科の授業で、櫛間亨教諭(46)が生徒たちに問い掛けた。前回の授業で話した電池とは「全固体電池」で、実用化に向けて開発が進められている新しいタイプのものだ。今回の授業は「日本の産業のこれからを考える」がテーマで、櫛間教諭は全固体電池が社会に与える影響や日本の産業構造について説明した後、保存していた6月の新聞とともにワークシートを配布した。
 生徒たちは、テーマに関連する新聞記事を探し、日本の産業の発展について「課題となること」「有効な出来事や動き」をワークシートに箇条書きするよう指示された。また、一部の生徒はテーマに関係のある情報を、櫛間教諭とともにタブレット端末を使ってインターネットで調べていった。
 ここで櫛間教諭が生徒たちに期待していたのは、一つのテーマに基づいて調べることで何らかの発見をすることだった。これまでの授業では、授業内容に関する新聞記事やネット上の情報を生徒たちに提示して活用していたが「単に記事や資料を見せるだけでは、生徒たちの物の見方や考え方が深まらないのでは」という懸念があったからだ。
 生徒たちは4~6人ずつでグループをつくり、それぞれ担当するページを決め、テーマに関連する記事を手分けして探していった。互いに「これはどうかな?」などと尋ね合いながら、紙面に目を通した。
 「ホンダが小型ビジネスジェット機を国内投入」「ふくおかフィナンシャルグループと十八銀行の経営統合加速を公取委が促す」といった記事をピックアップしていく中、ある女子生徒は事故が産業に影響を与えることもあるのではと考え、事故に関する記事をワークシートに書き出してよいか櫛間教諭に質問。テーマとの直接的な関連性は低かったものの、櫛間教諭は「記事を読んで連想するかたちで他のニュースに着目した点が良い」と、女子生徒の視野に広がりが出たことを評価していた。
 授業が終わりに近づき、調べた情報の数を確認すると、新聞からはテーマに関連した記事が幾つも見つかっていたが、ネットは「日本 産業 課題」などといった検索ワードで調べたため膨大な情報がヒット。この結果を見て、櫛間教諭は「サッカーW杯の試合結果などのように、知りたいことが具体的だったらネット検索は役立つ。しかし、今回のテーマのように漠然としていて、それぞれの人が判断を求められるような内容について調べるなら新聞の方が見つけやすい」と説明した。
 自分なりにテーマを持って記事を読むことで、いろいろな発見がある│。新聞が持つ可能性の一端を生徒たちは感じ取ったようだった。

マイレッスン/スクラップなど重視・櫛間亨教諭

 本校では生徒たちに、一つのニュースを継続して追い続けるスクラップ作りや、記事の内容について自分の意見、考えをA4判の紙にまとめるといった取り組みを行わせている。また、教室のそばの廊下にベンチを設置し、休み時間などに生徒たちが座って新聞を読めるようにしている。
 このような活動を通じて新聞に触れる時間を増やそうとしているが、日頃から新聞を読んでいる大人と異なり、まだ生徒たちは何らかのテーマを持って読むまでには至っていない。現在は教師の側がテーマを定めて新聞を読ませている段階だ。
 将来、生徒たちが社会人となった時、新聞の必要性を感じ、読まないと落ち着かないというようになってほしい。そこまで到達させる道筋やステップは見えていないが、試行錯誤していきたい。新聞記事を読んで「なぜだろう」と疑問を持てるような洞察力を中学生のうちに養ってもらえればと思う。(談)

感想/世界知ることできる

2年 長友羽美(うみ)さん(13)

 普段は新聞を読んでいないが、授業で紙面に目を通し、世の中のことを広く知ることができると分かった。これから少しずつ読んでいきたい。

感想/政治、社会の動き追う

2年 川原典(つかさ)さん(13)

 日頃よく見ているインターネットのニュース記事よりも新聞記事は分かりやすいと感じた。政治など社会の動きは新聞で追っていきたい。

感想/動物、農業の記事興味

2年 永延(ながのぶ)清一郎さん(14)

 動物や農業の記事に興味がある。インターネットだと自分が調べたいことしか見ないので、新聞で幅広くニュースをチェックしようと思う。

NIEのすすめ/中小企業支援コンサルタント 長友慎治/地方生き残りの施策

 7月13日付の全国紙に「禁錮2年を求刑、検察『過失極めて重い』 スマホ自転車で致死、20歳初公判」という見出しの記事を見つけた。二十歳の元女子大生が昨年12月に、前方不注意で歩行者に衝突した事故の初公判を報じる記事だった。
 7月18日付の宮崎日日新聞には「自転車日本一周 日向特産をPR」という見出しの記事が出た。19歳の青年が起業を目指し、日本を一周する旅に出たニュースだ。自転車、二十歳前後の若者と共通点のある記事だが、その内容は「事故」と「明るいニュース」に分かれた。
 私は、中小企業の経営者の皆さんの相談を受ける立場として、朝日、読売、毎日、日経、宮日、夕刊デイリーと新聞6紙に目を通すようにしている。日々、たくさんの事件や経済の動き、国際ニュースなどが飛び込んでくる中から「今の私(相談者)に必要な情報」を読み込む。そうすることで、トレンドから予測されるビジネスチャンスをつかむことができ、将来予見できそうなリスクを回避することができる。つまり、自分(相談者)が生き残り、自分自身(相談者)を守るために新聞を読んでいる。
 そんな私が小学生、中学生、高校生の頃に熱心に新聞を読んでいたかというと、残念ながらそうではなかった。真っ先にラテ欄(ラジオ、テレビの番組表)をチェックし、後のページはパラパラッとめくる程度だったと記憶している。
 しかし、中学生や高校生の時に冒頭の新聞記事を読んでいたら、どう思っただろうか-。40歳を超えた今の私は「脇見運転で悲しい事故が二度と起きないような自転車は作れないだろうか」「自転車に乗りながらでは操作ができないスマートフォンを作れないだろうか」と考える。今の中学生や高校生も、日頃から新聞を読む習慣を身に付けていれば、同じように考えるはずだ。そのような若者が世の中をより良くする発明をしたり、社会課題を解決するイノベーションを起こしたりすると信じる。
 つまり、新聞を読み、多くのニュースに触れた若者たちは「自分たちの社会がもっと住みやすくなるには?」「悲しいことが起こらないようにするには?」と知恵を絞る。特に「地方創生」が叫ばれる地域の若者こそ、世の中の動き、全国で起きていることに敏感であってほしいと思う。そのような若者の「情報格差」を解消し、目まぐるしいスピードで変わる社会環境でサバイブする力を育てることにつながるNIEの充実は、地方の生き残りを懸けた重要な施策でもある。
 二十歳の元女子大生の判決は8月30日。19歳の青年が日本一周から帰ってくるのは年末。それぞれの続報が新聞紙上に掲載されることもあるだろう。どちらの若者の未来も見守りたい。

 ながとも・しんじ 1977(昭和52)年、宮崎市出身。早稲田大学を卒業後、東京都で週刊誌記者、広告会社等を経て日向市にJターン。2017年1月から「ひむか│Biz」センター長。